2017年10月17日

~翻訳のトンネルを抜けると…~ (2017/10/15号)

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20171015-1hareけ03 先日、今年のノーベル文学賞が発表され、日系英国人のカズオ・イシグロ氏が受賞されました。

うぷは「ノーベル文学賞」と聞くと、いつも心をよぎる事があります。

日本人で初めてノーベル文学賞を受賞したのは、ご存知の通り 川端康成です。
その受賞対象となった作品のひとつが、代表作『雪国』。
当たり前ですが、選考委員の方々は、この名作を日本語で読んだワケではありません。

「英訳は不可能」と言われていた川端康成の繊細で美しい日本語。
それを見事に翻訳して世界に広め、日本人初のノーベル文学賞受賞に導いた方がいます。
それは、アメリカ人の日本学者、エドワード・サイデンステッカーという方です(故人)
実際、川端康成自身も「ノーベル賞の半分は、サイデンステッカー教授のものだ」と言い、賞金も半分お渡ししているのだそうです。

うぷは英語はからきしダメなのでうまく説明できないのですが、日本語は主語が省略される事が多く抽象的な表現が好まれ、英語は必ず主語があって具体的・説明的な表現が好まれるのだそうです。
この違いから小説の翻訳は、文章を「正確」に翻訳するのではなく、その作家の作風や世界観を「誠実」に翻訳する必要があるのだそうです。
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あまりにも有名な『雪国』の冒頭、
  「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。
                     夜の底が白くなった。」

これを、サイデンステッカーが訳した、英題『Snow Country』の冒頭から、もう一度日本語に訳々すと、
  「汽車は長いトンネルを抜け雪国に出た。
          大地は夜空の下、白く横たわっていた。」
となります。

静かに情景を浮かび上がらせるような原作の表現が、訳々文では映画のワンシーンのよう目に浮かびます。

翻訳家の方の言葉の選択、単語の取捨といったさじ加減が、翻訳のトンネルの先にノーベル賞をもたらすのだと思うと、重い役割でありながらけして表舞台に立つ事はない翻訳家の方々に、改めて敬意を表したいと思います。


hare03 実はうぷには、心から敬愛する翻訳家がいました。

その翻訳家は、永井 淳 という方です。
大好きな作家J・アーチャー氏の作品を、デビュー作からずーっと手掛けて来られました。
原書を読めないうぷは、作品が翻訳のトンネルを抜けて来るのを出口でウロウロしながら待つばかり。
そんなうぷにとって、永井氏は作家と同じくらい大切な人なのです。
そして『雪国』の例のように、永井氏はきっと、原作の魅力をより日本人の心情に沿うように訳されていたのだと思っています。

残念な事に永井氏は、2009年に76歳でお亡くなりになました。
その最後の翻訳となったのもまた、J・アーチャー氏の作品でした。

現在、J・アーチャー氏の作品は、新しい翻訳家の方の手によりすでに2作品が翻訳されています。
そして今、うぷが待ちわびているのが『クリフトン年代記』。
2016/12/19号のおさかな通信でも触れた、アーチャー氏が現在執筆中の大長編です。
うぷは『ハリー・ポッターの教訓』に従い、大人しく完結を待っています。
(2016/12/19号 『ハリー・ポッターの教訓』 : http://osakana.gunmablog.net/e378625.html )


hare03 先日、本屋さんへ行ったらこのようなものを見つけました(下の写真)。

新しい翻訳家の訳による、超大作『クリフトン年代記』。
どうやら、翻訳のトンネルを抜けて本屋さんの店頭に並ぶまで、あと少しのようです(^-^)

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「翻訳の長いトンネルを抜けると本屋さんであった。」

天国のサイデンステッカー教授、この文を英訳してJ・アーチャー氏に届けてくれますか?



 それでは
    また来週~(^。^)/~


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この記事へのコメント
♥ おかかちゃん

クロスありがとう!
結局、次回の時になりそうだけど、取っておいてくださいね(^-^)

翻訳しだいでノーベル賞が取れるか取れないか…なんて、作家もなかなかスリリングな仕事ですよね~(^。^;;
Posted by うぷうぷ at 2017年10月30日 23:57
♥ ぐーたら主婦!?さん

翻訳家の事なんて、フツーはあんまり考えないですよね(^-^)
でも、「赤毛のアン」の翻訳をした村岡花子さんがNHKの朝の連続ドラマでとりあげられたりして、ようやく翻訳家にもスポットが当たり始めたのかも…。
興味深いエピソードもあるので、いずれまた、翻訳家の事、記事に書きたいと思うので、読んで下さいね(^-^)
Posted by うぷうぷ at 2017年10月30日 23:51
うぷさんこんにちは!

今まで本を何も気にせず読んできたけど、翻訳してる人がちゃんといて、その人によってニュアンスが伝わったりするんだなぁと、なんだか学びましたね( ´ ▽ ` )さすがうぷさん✨知的!✨


あと、コメントから申し訳ないのですが、注文していただいたピンクのクロスが届いたので、次回の時か、いつでもお店に寄ってください(o^^o)
Posted by おかか at 2017年10月20日 15:41
『雪国』英訳されてたのですよね…
受賞されてもそこまで考えてなかったです( ̄ー ̄)

さすが、いろいろ調べてますね‼
勉強になります(#^.^#)

また、いろんな事教えて(*^^*)
Posted by ぐーたら主婦!? at 2017年10月19日 23:39
♥ ちんあなごさん

Oh! チンアナゴサ~ン(^o^)
ゴブサタデスネ~(^-^)   
(ボディーアクション付)
Posted by うぷうぷ at 2017年10月19日 00:35
アクセントを付けて、

「ホンヤクノ~ トンネルヌケルト~ ホンヤサ~~ン」

ボディーアクションは忘れずに!
Posted by ちんあなご at 2017年10月18日 07:41
 
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