2017年06月04日

~バベルの塔~ (2017/6/4号)

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hare03 東京都美術館で開催中の『ブリューゲル展』に行って来ました。

20170604-1ブリューゲルは、16世紀のネーデルランド(現在のオランダ)の画家です。
日本で言うと、ちょうど織田信長と同じ世代です。

農民の生活を題材にし、細部まで丹念に生き生きと描いた作品が数多く残されていますが、今回の美術展の目玉は、傑作と名高い『バベルの塔』です。

『バベルの塔』は、旧約聖書の「創世記」に登場する物語のひとつです。

その昔、人々は同じ言葉を使って同じように話していました。
彼らは、自分たちの民族が各地に散らばらないよう、住みついた土地に街を作り、さらに天まで届く塔を建てる事にしました。
そして人々は、神から賜った「石」や「漆喰」ではなく、自分たちが作った「レンガ」や「アスファルト」を用いて塔の建設を始め、名をあげようとしました。
天からそれを見た神は、同一の言葉をもつ民の強力な結束力と能力を危惧します。
「彼らは一つの民で、同じ言葉を話しているからこのような事をし始めたのだ。
それなら、彼らの言葉を混乱させ、互いの言葉が聞き分けられぬようにしてしまおう。」
神は、それまで一つだった人間の言葉を、互いに通じないようにしてしまいました。
その結果、人々は意志の疎通ができなくなり、塔の工事も続けられなくなりました。
やがて人々はこの地を離れ散り散りになり、世界は分裂していきました。

うぷは長い間…と言うか、この「バベルの塔」の展示室の解説を読むまで、「バベルの塔」の物語は、神に挑戦するが如く高い塔を築き、傲慢にも神の領域へ踏み込んだ人間に怒った神が塔を破壊した、という物語だと思っていました。
ところが正確には、神は直接手を下して塔を破壊したのではなく、人々から「同じ言葉」というコミュニケーションツールを奪い、その結果、人間が自らが工事を放棄した、という事でした。

kumo03 「レンガ」とか「アスファルト」とか建築資材を勝手に開発しちゃってるし、「高い塔を作って名をあげよう!」とか言っちゃってるし、この『バベルの塔建設プロジェクト』、神として、なんだか気に入らない…(-_-#
神の力と技をもってすれば、こんな建造物を跡形もなく壊す事など朝メシ前でしょう。
でもせっかく作りかけた塔を、有無を言わさず目の前で壊してしまったら、いくら神と言えど、人々の激しい反感を買い、支持率は確実に低下してしまう…。
そこで着目したのが、コミュニケーションツールたる”言葉”。
お互いに言葉を通じなくし、結束力・団結力を弱めちゃおうという作戦。
この方法なら、神が関与した事実を隠したまま、建設計画を頓挫させる事ができると踏んだのでしょう。
その思惑通りこの作戦は功を奏し、「バベルの塔 建設プロジェクト」は自然消滅。
かくして、旧約聖書の創世記・第11章のくだりとなった訳です。

ame03 名画「バベルの塔」の展示室で、うぷはずいぶん長い時間を過ごしました。
大胆で壮大な構図でありながら細部まで緻密でリアリティのある絵。
工事に携わる職人やすでに住み始めた人たちのなど、1,000人以上の人々が丹念に描き込まれ、見ていると、ひとりひとりの生活まで垣間見れそうです。
洗濯物が干してあったり、教会の前に行列が出来ていたり、下層には市場がある模様…。
職人さんたちの仕事ぶりも見て取れ、ハムスターの滑車みたいな人力クレーンを動かす人、粉まみれになってる人など、その働きぶりが伺えます。

「あら奥さん、どちらに行って来たの?」20170604-2
「2層目の市場よ。とっても混んでたわ」
「親方、おはようございます」
「おぅ!今日も怪我のないようしっかり働けよ」

そんな会話が聞こえてきそうです。

でも、
この絵の場面から程なくして、ある朝突然、人々はお互いの言葉が通じなくなってしまいます。

それは、
せっかく作り上げた塔が目の前で壊されてしまうより、20170604-3
もっとずっと残酷な事ではなでしょうか…。

もっと他に、手段があったんじゃない? 神様? 

絵はとてもすばらしかったけれど、なんだか釈然としないまま、うぷは美術館を後にしました…。


 それでは
    また来週~(=_=)/~


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この記事へのコメント
♥ おかかちゃん

『ブリューゲル展』では、「バベルの塔」と並んでヒエロニムス・ボスの作品とその模写が目玉になっていました。
ボスは、ブリューゲル、の少し前の世代の画家で、「快楽の園」というすごく有名な作品があります。
独特の世界観があり見る人の好みの分かれるところです。
でもうぷ、おかかちゃんが好きそうな気がする~(^o^)

『ブリューゲル展』公式HP(http://babel2017.jp/) の「見どころ」⇒「ボス・リバイバル」をチェキ!!
Posted by うぷうぷ at 2017年06月09日 21:52
♥ ちんあなごさん

東山魁夷館、改修工事!?
知りませんでした(+_+;;

前に行ったのはいつだったかな…と思い出してみたら、
もう20年くらい前、まだ東山魁夷氏がご存命の頃でした。
その時、偶然にも奥様がいらしてたんですよ。
「魁夷先生はご一緒じゃないんですか?」と伺ったら、
「ちょっと体を壊していて…」とおっしゃってました。
お亡くなりになる少し前の事でした。

工事が終わったら、久しぶりに訪ねてみたいです(^-^)
この美術館に収蔵されている『緑響く』という作品が、
うぷは大好きなんです。
Posted by うぷうぷ at 2017年06月09日 21:51
うぷさんこんにちは(*^ω^*)
美術館に行って来たんですね✨実はわたしも美術館大好きです✨
とは行っても近場のところにちょこちょこ行くくらいですが…( ´∀`)

バベルの塔って、耳にしたことはあったけど、何のことか知らなかったので勉強になりました✨うぷさん知的な感じで素敵ですね(*^ω^*)✨
Posted by おかか at 2017年06月08日 08:59
さすがうぷさん
わかってる~(^o^)/~~

東山魁夷美術館は、休館中で~す。
Posted by ちんあなご at 2017年06月08日 00:12
♥ ぐーたら主婦?!さん

開口一番「先週、更新してないでしょ!」って怒られちゃったけど、
びっくりで楽しい偶然でしたね~~(^-^)
また怒られないように更新なくちゃ~~f(^_^;

高崎でも、興味深い美術展や企画展がありますよ。
機会があったらお知らせしますね~(^_<)
Posted by うぷうぷ at 2017年06月07日 23:53
♥ ちんあなごさん

あぁ、あの、砂の嵐に隠されててコンピューターに守られてる塔?
ちんあなごさんはきっと、そこんところを鋭く突っ込んでくると思ってました(^-^)v

信濃美術館行ってきたんですか?
東山魁夷館にも行きました?
Posted by うぷうぷ at 2017年06月07日 23:52
奥深く迄追及しますね(*^^*)

私なんて今そのコミュニケーションツールに苦労してますよ(..)

『なぜ皆一緒でないのよ』って、大声で叫びたい!

でも拝読してたら私も美術展いきたくなりました…

午後の休憩(には長過ぎるのだが)に余韻を楽しむマダム…憧れるなぁ

またニアミス出来ることを楽しみにしてますp(^-^)q
Posted by ぐーたら主婦!? at 2017年06月05日 07:30
オイラは、土曜、日曜で、長野県信濃美術館と、白馬美術館へ行って来ました。

バベルの塔って…世界の平和を守るため、3つの僕と一緒に戦う超能力少年が住んでいる塔じゃなかったの?
Posted by ちんあなご at 2017年06月05日 00:47
 
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